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アニメ「空色ユーティリティ」 各話コメントⅢ(9話~12話)

2025年1-3月期アニメ「空色ユーティリティ」の9話~12話のコメントです。

第9話「スペシャルなバズ」

深いメッセージと動画撮影シーンなどのコメディとが上手く混ざり合った話でした。

まずは自分が好きになれるものを見つけるということです。彩花はゴルフも動画配信も始めたきっかけ自体は周りに誘われたり、やっていたりという受け身的なものでした。そして、始めたゴルフもウェアとかSNS映えとかに意識がいって、遥のように根っからゴルフに集中できない自分がいます。何もない自分を認めてほしくて目的というか趣旨を見失っているようです。以前3話で彩花が自信をなくした美波に「自分もまだ見つけている途中」と声をかけていましたが、それがつながってきました。プロという言葉も脳裏をよぎった彩花でしたが、遥を目の前に自分を小さく感じたようで、3話での美波が興味を持ったゴルフに対してやや挫折気味になったのと似ています。即ち、遥は自分のことに一直線なので、バズよりやりたいことと言いますが、それに対して、周りに振り回されがちな彩花ということです。

それについてはもう一つのテーマであるグリーンについての発信を通してようやく達成感が得られて、彩花自身の生きがいみたいなものを実感できたのかなと思います。

そのもう一つのテーマにゴルフ場のグリーンを大切にすることです。本作はゴルフ競技の周辺の描写に力を入れていて、それは

美波

「これもゴルフのうちかなって」

に集約されているでしょう。意外と見落としがちではあるものの、忘れてはいけないことを取り上げたと思います。

それらのテーマをSNSやゴルフ場でのポロシャツ販売*1などの楽しそうな活動を通して触れることができました。

彩花

「ありがとね、美波」

と「美波ちゃん」ではなく「美波」と呼ぶのも印象的です。

キャラクターのさらなる一面を知る小ネタも満載でした。まずは美波のゲームが得意なこと。もっとも、ソシャゲ好きなので意外性はないですが。また、2話で美波が身につけた「JAPAN」のユニフォームは遥のジュニア時代のものだったこと。遥については、冒頭回想シーンにおいて、スナック菓子を一気に口に入れていて、大胆さが見えてきます。マサが八百屋で働いているのも発見でした。プロデューサー美波のビジュアルも愛着が持てます。

ところで、脚本のたたき台の段階では彩花の母親が登場してゴルフをやめさせるという案だったそうです。


第10話「スペシャルなお嬢様!?」

雨の日には不穏(というと今回は語弊がありますが、)な動きがあるように、今までの作品の価値観に真正面から対立するキャラクターの登場でした。

OP前から雨を「最高」と捉える遥と「最低」とこぼす日向(ひな)なわけですが、ゴルフに対する考え方の広さの対比になっています。彩花が美波に言った「想像と妄想は違う」ということも暗示しているように感じます。練習場での柱を隔てた日向と美波たちという構図も見事です。

遥は

「ゴルフは一人でやるだけじゃないんだよ、ひなちゃん」

と懐が深いですし、美波や彩花も比較的普通のショットができても喜び、ゴルフを楽しんでいます。

他方の日向は、スコアを追うゴルフだけに集中し、「120」や「80」といった具体的な数値にも言及。本作で初めての「ド素人」というネガティブな言葉や怒鳴る場面も見られました。今の遥を受け入れられないのもそう。でも、美波におだてられると、気を良くしてアドバイスを引き受けるあたりが子どもらしい。ちょろごん...

美波も彩花も怒らないの偉いですね。日向のショットに目を輝かせていることも素直です。

次回、どうまとめるのか。

ちなみにメイドさんは「のだみこと」という名前だそうです。


第11話「スペシャルなダブルス」

監督が競技ゴルフ(スコアで勝負するゴルフ)と趣味ゴルフの両方を知っている*2からこそ調和のとれた答えが示されたと思いました。

競技ゴルフももちろんゴルフですが、時には結果にのみ目がいってしまい、息苦しくなってしまいます。他方の趣味ゴルフも何でも、誰でも良いわけでなく、ゴルフを好きになれる仲間*3がいるからこそ続けたいと思えるのでしょう。

今回のテーマは人のゴルフを見たいと思えること。遥曰く、ダブルスは自分では見えない他人のゴルフという景色が得られるそうですし、最低3ホールは片方のショットを採用するルールも手伝って、否が応でも相方のショットに目を向けることになります。日向は遥の真剣なゴルフを見たいと従来から思っていますが、美波も遥とゴルフをしたいし、彼女のゴルフが見たい。そして日向のゴルフも見たいと言われたこと*4で、その意味の核心を理解したようです。

1話で述べられた「人によって色々なゴルフがある」に触れながら、日向の「一人で世界一になれる」ゴルフも否定されず、尊重されるだけに留まらずそれぞれのゴルフを見たいということに踏み込んだことが評価できます。この手の楽しさと結果、どちらを追い求めるかという話はよくありますが、そこに大きな意味を見出していました。

そうして、日向も自分のゴルフを貫き、美波のショットをも「貴重な一打」と言うくらいになっていました。それは勝つための自分たちのスコアと、額面通りに受け取るより、価値観の違う美波のゴルフも自分にとって大事であると解釈した方が良いと思います。

なお、それとは別に日向は遥のこととなると、表情を隠せなかったり、最後勝てずに駄々をこねたり、子どもっぽさが残っているところも可愛かったです。


第12話「スペシャルな特別」

本作の特徴の一つに個人競技のゴルフをみんなで共有することが挙げられます。その中で今回は美波が一人でラウンドに出ることで、一般的な自分と向き合うゴルフを取り上げる形になったと思います。

とはいえ、美波にとっては

美波

「私、やっぱり遥さんと彩花さんと一緒がいいです。一緒にゴルフしたいです」

これが一番でしょう。美波のスマホの壁紙が2話で撮った遥との写真であることも示唆しています。アイキャッチの遥と彩花の後ろ姿には寂しさがありましたし、初めてパーをとったときの喜びを分かち合う人がいないのは、心残りなのでしょう。

また、空振りした時に大げさな動きで自問自答したり、AIキャディロボットを妄想したりする様子は一人ゴルフとの緩急になっているようでした。最終ホール、パット前に背中をかくのも引き締まるシーンです。

そして、EDに単発版の楽曲を持ってくるとは。その時から見ていた私にとっては嬉しい限りでした。


まとめ

終盤では従来のゴルフのイメージである、スコアや個人競技といった点に触れるものの、比較や優劣にしないことはもちろんのこと、単にそれぞれという結論からさらに深くしたことに意義があったと思います。グリーンのこともそうですが、どんなプレイスタイルであったとしても最も大事にしなくてはならないことを扱ったのではないでしょうか。

全体の感想を述べると、ものすごく期待はしていて、1話目からそれに応えられる作品だと確信しましたし、面白いエピソードの数々に毎話楽しませてもらいました。それにじっくり時間をかけて作られたことがよく分かり、そこからも熱意が伝わりました。私としてはまだまだ本作に触れていたい限りですが、一区切りということで、素敵な作品をありがとうございました。また、2期への意欲万端とのことだそうですので、それがあればとても嬉しいです。

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*1:彩花が3着の予定が誤って300になったための在庫処分が当初の目的

*2:監督本人のゴルフはスコアを意識するそう

*3:遥にとっての美波と彩花

*4:かつては自分のゴルフを仲間に否定されたこともあって