アニメ模様

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話数単位で選ぶ、2024年TVアニメ10選

今年もこの企画に参加しました。集計は例年同様にaninadoさんです。今回は論点別に並べてみました。


・2024年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
・集計対象は2024年中に公開されたものと致しますので、集計を希望される方は年内での公開をお願いします。

スタッフの情報はwikipedeiaなどを参照しています。

・視点の面白さが映す人物像

まず最初の2本は少し変わった視点で対象にアプローチした話です。

1. アイドルマスター シャイニーカラーズ 2nd season 第5話「行こうって言ったら、それはもう」

脚本:加藤陽一 絵コンテ:小川諒、岩田健志 演出:岩田健志

©Bandai Namco Entertainment Inc.

円香、小糸、雛菜の目線で彼女らのリーダー、浅倉透という人物を理解する構成でした。

まずは円香の感じている、透がどこへ行こうとしているか読めないことや芸能界への疑念を通して、透のミステリアスな側面が見えてきます。続く小糸は自身の苦手で不器用なところもあって、透への憧れカリスマ性を映し出します。最後は雛菜によって、打ち合わせと異なるデビュー番組の段取りに傷ついた小糸を気遣う透の友達幼馴染みとしての姿が浮かび上がりました。このように一人の人物の様々な表情が目線を変えながら入ってきます。

ユニットという枠組みが生きたことに加え、三人の視点を順に見せることで透だけでなく、彼女らの基本的な特徴や立ち位置を理解するのに効果的だったと思います。透を知るという点では11話もその一つですが、他の3人との関係性から見えるところに関心をそそられました。また、エピソードの一部はゲーム『シャニソン』にあるのですが、そのときはこういう視点の描き方を感じなかったので、アニメにすることでより表現が豊かになりました。即ち、アニメ化の意義があるストーリーだったのではないでしょうか。

デビュー時の彼女らの振る舞いとこの見せ方の双方によってこのユニット、ノクチルを私の中に深く刻み込んでくれました。

本放送時のコメントです。
アニメ「アイドルマスターシャイニーカラーズ 2nd season」 各話コメントⅡ(5話~8話) - アニメ模様


2. ネガポジアングラー 第7話「この人何者?」

脚本:鈴木智尋 絵コンテ:柴田匠 演出:福島利規、いわたかずや
作画監督:田中穣、武内啓、阿形大輔、高橋こう平、荒川奈津、西村千春、Triple A、Revival、RadPlus

©NEGAPOJI-ANGLER PROJECT

影の薄かった*1コンビニ店員の一人、藤代と彼がナレーションを担う作中の番組『Fish Dreamer』の目線で初心者常宏の釣りスタイルに迫ります。

特にルアーで大物を狙う常広に取材風の演出が加わる場面です。ここでは途中でハナから「なあ、さっきから何ぶつぶつ言ってんの」という突っ込みが入るのが面白いところです。つまり、番組風の視点ですが、実際はそうではなく、常広のある種の妄想ということでしょうか。こうして視聴者も視点に振り回されることで、彼の初心者ながら大物に挑むことで気が大きくなっている姿がより一層目立つ格好となっています。釣りに慣れ始めた人や常広の気持ちを表すのに寄与する流れだったと思います。

また、釣り人の一日の行動、釣りの方法や魚の習性、釣りを待ちながら会話をすること、最後にみんなで楽しく食事をすることなど、「釣り」の基本もこの独特な見せ方によって再確認できました。中盤7話にこのような展開にしていて意味があったと思います。

ちなみに話の最後で実際に釣れること以上に、下調べやシミュレーションをしているときが楽しいと言われていました。話数10選も、記事を公開することのみならず、候補を選び記事を練っているときが楽しかったりするものです。

そんな面白い見せ方に私は釣り上げられてしまいました。


・"静"の中で自分と向き合う

"動"と"静"があると思いますが、物語が大きく動かない"静"の中で、キャラ個人の心情や考えが見える話があります。こういう話も捨てがたいです。

3. ささやくように恋を唄う 第3話「告白と、戸惑いと。」

脚本:大友奈美 絵コンテ:小坂春女 演出:河村彩 作画監督:スタジオ時雨

©竹嶋えく・一迅社/ささやくように恋を唄う製作委員会

ここではひまりが依(より)から恋人としての付き合い、告白をどう受け止め、返事するかをじっくりと考えます。「好き」の定義から改めて見直すこと、依を傷つけないように返事を考えているとメールすること、そして自分の気持ちを言葉を丁寧に選び伝えること...... それまでは依の見た目のクールさと内の情熱との二面性に惹かれていましたが、ひまりの素直で他人思いな性格にも目を向けてしまいます。また、依も返事のことで頭が一杯で他に手のつかない様子で、返事を待つ側にとっての時間の長さが上手に表現されています。

「好き」や「付き合う」といった文字では一言で表現できてしまう事柄に対して、二人ともそれ以上の重みを持つ複雑な思いを巡らせていました。そのプロセスに1話を割いて大切にしている丁寧さが心に残りました。また映像も、作画力が落ちた面*2はありますが、結果として派手に動かさないことや、コマ割り風の場面転換で""をより印象づけたと思います。

本放送時のコメントです。
アニメ「ささやくように恋を唄う」 各話コメントⅠ(1話~4話) - アニメ模様


・ショートアニメ、ショートギャグに見られる工夫

以下の2本のうち、一方はショートアニメなのにメインの人物を違和感なく登場させて流れのあるストーリーにしていて、他方は30分アニメなのにショートエピソードを次々と詰め込み独特のテンポ感を出していて、それぞれ尺にとらわれない工夫が見られました。

4. にじよん あにめーしょん2 第3話「同好会とはんぺん」

※脚本、絵コンテ、演出、作画監督のクレジットは無し

©プロジェクトラブライブ!にじよん あにめーしょん

はんぺんと「にじよん」と言うアイキャッチを用いて、いくつかの場所に分かれた13人を自然に登場させて連続的な話になっていました。はんぺんもニジガクの一員であることを改めて示しましたし、はんぺんがみんなをつないだと思うと味わい深いです。

また、13人の代表的な特徴を活かしていて基本に忠実でした。エマのマイナスイオン設定やかすみんの可愛さを主張すること、歩夢の侑を見つけて追いかけてしまうことなどです。そのためシンプルでありつつ密度の濃い3分*3でした。あと、『にじよん』のランジュのはしゃぎ振りが私は好きです。

ショートアニメとは言え、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のキャラ設定を前提にできるアドバンテージはありますが、『にじよん』らしい掘り下げを通して洗練されたことは差し置くわけにいきませんでした。

本放送時のコメントです。
アニメ「にじよん あにめーしょん2」 各話コメント - アニメ模様


5. しかのこのこのここしたんたん 第6話「夏のシカ祭り」

脚本:あおしまたかし 絵コンテ:大隈孝晴 演出:靑木由芳
作画監督:橋本七虹、九ノ日、安藤暢啓、馬場一樹

©おしおしお講談社/日野南高校シカ部

『シカ部・ざ・ろっく』もあるくらい4コマ漫画顔負けの怒涛のショートギャグ連発で、いつも以上の勢いに押されてしまいました。ネタ自体はあまり深く考えても仕方ないものばかりなのですが、特に本作のメインであるツノの活躍ぶり、ツノの出血大サービスには笑いとともに一貫性を感じました。ツノは売りに出されたり、おとぎ話の斧になったり、ストローになったり、さらにはかつお節にまでなっていましたから。ツノという意味では10話の生け花もお気に入りですが、それまで漠然とギャグを見ていたところの取っ掛かりとしてツノを実感できたという点も考慮してこちらを選びました。

一応後半の通常パートにも触れておくと、夏が中々来なかったことや毛の生え変わりの時期がずれていることにナレーションで程よく補完するだらけ具合で、メインディッシュの後のデザート*4のような緩急のついた構成になっていました。それは30分アニメの中にショートアニメを入れた特権と言えるでしょう。


・作品の核心に触れた話

どの作品も何らかのテーマがありますが、その中でもテーマの趣旨がよく理解できたり、それを真正面から描いたりする、ある意味王道のような回を3本取り上げます。

6. 魔法使いになれなかった女の子の話。 第4話「私、お芋食べまーす!」

脚本:金杉弘子 絵コンテ:泉しづか、高田耕一 演出:黒瀬大輔
作画監督:村上雄、外山陽介、永田有香、Dogwood、STUDIO MASSKET、Studio EverGreen

©「まほなれ」製作委員会/MAHONARE Project

アニメの題材で魔法が取り上げられることは度々ありますが、その定義は様々です。RPG的なものから、本作と同時期の『アクロトリップ』におけるモバイル回線に見立てたような設定まで、魔法の淵源によって関わる人物やストーリーの方向性は大きく変わってきます。

この話では本作における「魔法」の根幹に接することができました。魔法手帳で魔法を起こす現代魔法とは反対の古代魔法にそれが見受けられます。ちなみに「魔法」が先述の二派に分かれていること、両者が対立していることもこの回で明かされて、「魔法」を理解するのを後押ししています。

方陣図形の集まりであると以前に言及されたこともそうですが、そこに自然のエネルギーに由来する背景が加わることで、より興味を持たせてくれました。ファンタジー風の尖った魔法ではなく、基本的な自然科学に帰着し、自然に根付かせた素朴さに「魔法」の魅力を感じました。実生活においては文明の利器に頼ることに私は何の反発もないですし、デジタル端末に集約したライフスタイルに慣れつつもあります*5。作中の現代魔法はそういう位置付けですが、それだからこそ、アニメにおいては単なる道具でも能力でもない血の通った「(古代)魔法」に心を動かされたのだと思います。

それはお芋掘りという自然に触れることや料理で火を起こす際、太陽に感謝のおまじないをかける人がいることにも表れていましたし、本話に限らず作品全体により親しみやすさを持たせてくれました。



7. 夜のクラゲは泳げない 第8話「カソウライブ」

脚本:屋久ユウキ 絵コンテ:ソエジマヤスフミ 演出:ソエジマヤスフミ
作画監督:川本由記子、金慧秀、伊澤珠美、山本蓮雄、久保茉莉子、おさしみ丸、ぶんやま

©JELEE/「夜のクラゲは泳げない」製作委員会

本作の中心テーマ、創作、人の目、インターネットの長短、といったものが詰め込まれていたことと、ライブを通じて一つの集大成になったことは本作の見せ場でした。

この一言で終わらせてもいいのですが、具体的に述べることにします。まず、電話で他愛もない話をすることや合宿の様子には仲間と過ごす楽しさがありました。一方で観客を入れてのライブが困難になった際にみんなが一緒にライブからの景色を見たいと口を揃えることには、創作をする者同士の苦楽を共にする姿が感じられます。

次に花音(かの)がペンライトの動きに触れたことは、演者から見えるファンの思いやライブの手応えが伝わります。そして「画面越しでも人はつながれる」やファンアートの数々が浮かび上がる光景は作り手と受け手の一体感に他なりません。

この1本の中に創作活動で経験する喜怒哀楽が表現され、それらをみんなで共有するという、本作が大事にしたことの一つが集約されていたのではないでしょうか。

本放送時のコメントです。
アニメ「夜のクラゲは泳げない」 各話コメントⅡ(5話~8話) - アニメ模様



8. 菜なれ花なれ 第7話「ハイカラ×バンカラ!」

脚本:綾奈ゆにこ 画コンテ:梅津朋美 演出:中嶋清人
作画監督:細山正樹、李起燮、Jumondou Seoul、Jumondou Wuxi

©なれなれプロジェクト/菜なれ花なれ製作委員会

チア部の内外含めて幅広く応援を扱う本作ですが、この話でその「応援」とは何かを私なりに掴めたことが選出理由になります。

作中では応援(及び応援委員会)の一心同体といった雰囲気や実際に頑張るのは選手であることなどの非合理的に見える側面が苦手だった穏花(のどか)も応援に入り込んでいました。そこからも「応援」の真骨頂だったと思います。

他には健闘を祈り、お互いを応援する敬意やチアの華やかさ*6、応援に活気付く場の雰囲気など、応援の形や意味が多面的に示されていました。

それが野球という攻守の切り替えが分かりやすい種目と重なり、メリハリの付いた応援の輪郭が鮮明になっていました。

本放送時のコメントです。
アニメ「菜なれ花なれ」 各話コメントⅡ(5話~8話) - アニメ模様


・1話そのものが題材

最後の2本は作品の題材を1話分の構成をもってして体現した回です。結果として作品のテーマにも踏み込んでいますが、それ以上に話の作りがテーマと重なることに面白さを感じました。

9. 真夜中ぱんチ 第1話「炎上娘とお寝坊ヴァンパイア」

脚本:白坂英晃 画コンテ:本間修 演出:本間修 作画監督:さとう沙名栄

©2024 KADOKAWA/P.A.WORKS/MAYOPAN PROJECT

動画を題材にした作品ですが、この1話自体配信動画のような印象を受けました。軽快なOPで始まり、真咲の現状と心境をテンポ良く見せる本編。そして、ヴァンパイアりぶに出会うことの恐怖と神秘さで盛り上げて、最後はラップ調のEDで締めることに一本の動画らしさを感じました。

特に真咲がはりシスの公開した自身脱退の動画に愚痴をこぼすことや今後どうするかを自問自答しながら試行錯誤する様子に、真咲のドキュメンタリー映像というと大げさですが、私は真咲(まさ吉)の動向に自然と関心を持ってしまいました。例えば、脱退後すぐにソロの動画を載せてそれを見ながら色々つぶやく場面や、新しい出演者を募集して面接する際のツッコミに終始した空回り振りは真咲の苦労が声となっているようでした。

この先の話を見れば見るほど、真咲の性格の悪さが露わになります*7が、それでも真咲目線で応援したくなったのはこの第1話『炎上娘とお寝坊ヴァンパイア』という動画があったからだと思います。

本放送時のコメントです。
アニメ「真夜中ぱんチ」 各話コメントⅠ(1話~4話) - アニメ模様


10. リンカイ! 第8話「競輪という生き方」

脚本:白根秀樹 絵コンテ:石山タカ明 演出:木村寛、服部福太郎
作画監督:ヤツトコ アレクセイ、ルナーゴースト、朱央、劉沂

©RINKAI League Committee

この話ではマークと言われる道中は自力*8選手の後ろにつけながら風の抵抗を避けて、後半、直線で脚を使い上位を狙う作戦が紹介されました。そこでこの話からプロの競輪に踏み込んでより面白くなった本作自体がまさに競輪らしい走り方をしていたと思いました。即ち、その仕掛けどころの1本ということです。

競輪選手としてどうレースに臨むかに着目し、初勝利*9とルーキーファイナル出場のための競走得点*10を並べながら、1位2、3位の戦い方や考え方の違いに迫ったことは、競輪という競技及び選手に対する実感が湧きました。また、どちらにしても車券に絡む(3位以上になる)ことで客に還元するというプロとしての考え方もそこをより形作ったと思います。

具体的な作戦や車券(=賭け事)を扱うことで見応えが増した1話でした。

本放送時のコメントです。
アニメ「リンカイ!」 各話コメントⅡ(5話~8話) - アニメ模様



まとめ

今回は方向性を変えてみました。今まで本放送順に並べていて、それはそれで1年を順に振り返ることができて良かったのですが、私のフォーカスした項目順に並べて記事の流れを作った今回も面白くできたと感じています。ただし来年以降、どういう形式にするかは未定です。

ストーリーに大きな動きがあった話も選出していますが、多くは見せ方に工夫があった話数を選んでいます。これは後付けであって選出時はそれぞれ独立しているのですが、私の心に残った話の多くはそういう傾向だったのだと思います。また、オリジナルアニメからの選出も多かったです。そして、今年は別の場所で作品単位の感想を書く機会も頂き、こうしてみると、話数単位で書くことは作品単位より難しいということを改めて実感しました。

今年はブログを書く気力が下がってこの10選も準備不足でしたが、来年も感じたことを自分なりに言語化することは続けたいです。

*1:ほとんどの回で出演しないですからね

*2:顔が安定しないのと、体のバランスがおかしいのは見過ごせないけど、画を動かさないのは必ずしも悪くはない

*3:EDを除いた本編の時間

*4:ミニエピソード18本がメインディッシュ

*5:これらも自然科学の積み重ねですが

*6:自称、泥くさい「菜」の応援委員会も含めて

*7:9話などで、7話も結構マイペースかな

*8:序盤から先頭を走り1位を狙うこと

*9:1位をとること

*10:1位でなくても安定して上位でいると得点が増える